研究紹介

放射線が物質と相互作用する確率を測定する「基礎的な研究」と,放射線の工学・医学分野などへの応用を目指す「応用研究」を行っています.

●研究テーマ

●粒子線治療における被ばくに関する研究

 微小標的サイトへのエネルギー付与スペクトルの測定技術(マイクロドシメトリ)を用いて炭素線治療場の線量評価や陽子線治療場の生物効果比(陽子線が,γ線と比較してどのくらい生物に与える影響が大きいか)の評価を行っています.

 図に,炭素線治療場を,粒子識別型のマイクロドシメトリシステムで測定した例を示します.粒子識別用半導体検出器で人体模擬ファントム中で発生した2次粒子の種類が同定されていることが分かります.また,この粒子識別を用いて,粒子種ごとに線量を評価した例を示します.各粒子の線量への寄与が区別して評価できていることが分かります.

●福島原発事故による放射能汚染の測定・被ばくの評価

 2011年3月に発生した福島第一原発事故に伴う汚染調査を,発生当時から継続しています.土壌,植物,河川の汚染量測定を行い,人や環境への被ばく線量の推定を行っています.

 図は,2011年3月から継続している福島県飯舘村の空間線量率の測定例を示しています.2011年3月,2011年10月,2012年3月および2013年3月の線量率マップから,放射能の半減期で空間線量率が減少していることが分かります.



●中性子捕捉療法に関する研究

 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,予め腫瘍細胞内にホウ素(10B)を取り込ませ、中性子照射で10B(n, α)7Li反応を起こし、生成する短飛程のα粒子及び7Liで腫瘍細胞を選択して破壊する療法です.近年重要となっている中性子発生源,照射方法,投与した放射線の質・量の評価方法の研究を行っています.図に加速器BNCTのモンテカルロ計算入力例を示します.



●がんの密封小線源治療に関する研究

 密封小線源治療は,体内に配置した線源で腫瘍を放射線照射し,死滅させる療法です,これは,病巣に限局して高線量を投与できるという特長を持っています.主に線源の強さ(放射能)と投与線量の評価方法の研究に取り組んでいます.

 前者では,体内に線源を挿入する前・後・挿入作業中のそれぞれについて研究をしており,特に挿入作業中の評価は後述の移動線源評価と並行して進めています.

 後者では,実用されている各種の線源による線量分布のデータ整備,断層撮影法スペクト(単一光子放射型コンピュータ断層撮影)や回帰分析により挿入後に実測して評価する手法を開発しています.






●移動する線源の状態評価に関する研究

 放射線計測を用いて,移動する物体の運動状態や放射能を評価する新規な手法を開発しています.このうち放射能評価については,上記の密封小線源治療を対象に基盤技術を確立しており,他分野への応用に取り組んでいます.



●放射線と物質が相互作用を起こす確率を測定する研究

 粒子加速器からの高エネルギー粒子ビームを物質に照射して,粒子が物質と相互作用を起こす確率(断面積と呼びます)を測定しています.断面積は,エネルギー・医療・宇宙工学・新素材開発などの様々な分野で必要とされる物理パラメータです.

 測定手法に改良を加えつつ,様々な断面積を測定しています.図に測定した断面積を示します.点が測定値,線が計算モデルを用いた計算値ですが,モデルは測定値を再現できていないことがわかります.計算モデルを応用分野へ使用した場合,予想と異なる結果となる可能性があることから,計算モデルの早急な改善が必要です.



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